佐藤 健二
芸術学部卒 入社1年目 / デザイナー

佐藤 健二

エリア:大阪市、職種:デザイン事務所

「東京に行かなきゃ負けだと思ってた。」美大生だった僕が、なぜ大阪の小さなデザイン事務所を選んだのか。本音で語ります。

「クリエイターなら東京一択」の呪縛

僕は京都の芸術大学に通っていました。周りの同級生たちは、3回生になるとこぞって上京し、東京の有名な広告代理店やデザイン事務所のインターンに参加していました。 「大阪?あー、支社ならあるけど…メインは東京やしなぁ」 そんな空気が学科全体に蔓延していて、僕も当然のように「卒業したら東京に行くもの」だと思い込んでいました。

就活も東京を中心にしていました。夜行バスで往復し、カプセルホテルに泊まってポートフォリオを持って回る日々。 憧れの有名事務所の面接も受けましたが、そこで見たのは、徹夜明けで死んだような目をしている先輩デザイナーたちの姿でした。 オフィスの床には仮眠用の寝袋が転がり、デスクの上は栄養ドリンクの空き瓶だらけ。 面接官であるアートディレクターは、僕の作品集をパラパラとめくりながら、あくびを噛み殺して言いました。 「君、体力はある?うちはセンスより体力勝負だから。3日は寝なくても平気?」 その言葉を聞いた時、背筋が凍りました。 「僕がやりたいクリエイティブって、命を削る消耗戦の先にあるんかな?」 「いいものを作るために、人間らしい生活を捨てるのは本当に正しいんかな?」

大阪の「カオス」な魅力に気づく

そんな迷いを抱えながら、たまたま学内の掲示板で見かけたのが、今の会社の募集でした。 「大阪のオバちゃんの服みたいに、派手で面白かったらええねん!」 ふざけたコピーだなと思いましたが、ポートフォリオサイトを見ると、手がけている仕事がめちゃくちゃ面白かったんです。 地元の商店街のポスターから、老舗酒蔵のリブランディング、そして誰もが知る有名テーマパークの広告まで。 洗練されているけど、どこか「笑い」や「ツッコミ」がある。 そして何より、働いている人たちの写真が、みんな爆笑していたんです。 「大阪のデザインって、めっちゃ自由やん」 初めてそう思いました。

クリエイティブな余白がある生活

実際に入社して感じたのは、「生活の余白」がクリエイティビティに直結しているということ。 東京で就職した友人は、家賃8万円でユニットバスの極狭アパートに住み、満員電車に揺られて通勤しています。「休日は寝て終わる。展示とか行く元気ない」と嘆いていました。

僕は今、大阪市内の古いビルをリノベーションした広めの部屋(家賃6万円!天井高3メートル!)に住んでいます。 自転車で通える距離にオフィスがあり、通勤ストレスはゼロ。 仕事が終われば、心斎橋やアメ村のギャラリーを巡ったり、味のある純喫茶でアイデアを練ったり。 週末は京都の母校に顔を出して後輩とコラボしたり、古着屋巡りをしたり。

インプットの時間も、アウトプットするための物理的なスペースも、大阪なら十分に確保できます。 「いいもん作るには、まず自分が面白い生活せんとあかん」 社長の口癖ですが、本当にその通りだと思います。 枯渇したスポンジからは水が出ないように、心が乾いていたら面白いアイデアなんて出るはずがありません。

地域密着だからこそ、手触りのある仕事ができる

今の仕事で一番楽しいのは、クライアントとの距離感です。 東京の大手案件だと、代理店が入って、そのまた下請けで…と、自分が作ったものがどう評価されているのか見えにくいと聞きます。

僕たちは違います。 例えば、先月担当したパン屋さんのロゴ制作。 店長さんと膝を突き合わせて、「どんな店にしたいん?」「このパンのこだわりは?」って何時間も話し合いました。 試作品のパンを一緒に食べながら、小麦の香りをどうビジュアルで表現するか、議論し倒しました。

完成したロゴを見て、店長さんが「これこれ!これでお客さん呼べるわ!佐藤くん、ありがとうな!」って、僕の肩をバンバン叩いて喜んでくれた時、デザイナーになって良かったと心から思いました。 その後、そのロゴが入ったショップカードが街中で使われているのを見た時の感動は、言葉にできません。

大阪のお客さんは、反応がダイレクトです。 ダメな時は「なんかちゃうな〜」「もっと派手にしてや!」と直球で言われますが、良い時は全力で褒めてくれます。 その「手触り感」が、僕のモチベーションの源泉です。

1日のスケジュール(フレックス利用)

時間内容
10:30ゆっくり出社
朝は弱いので、フレックス活用。自転車で古着屋のウィンドウを見ながら通勤。
11:00クリエイティブミーティング
進行中の案件のデザインレビュー。社長から「おもんない!」と一喝されることも(笑)。
13:00ランチ
アメリカ村の定食屋へ。ボリューム満点で700円。エネルギーチャージ。
14:00デザイン制作
Macに向かって集中。好きな音楽を聴きながら没頭します。
16:00クライアント訪問
制作したラフを持ってお客様のもとへ。反応を生で見られる緊張の瞬間。
18:00ギャラリー巡り
定時はないので、仕事が落ち着けば早めに切り上げて、堀江や心斎橋のギャラリーへ。
20:00帰宅・自分の制作
会社の仕事とは別に、個人のイラスト制作やZINE作りをします。

佐藤くんのお気に入りスポット

  1. アメリカ村の古着屋
    • 新品にはない、変な柄のシャツや使い古されたジャケットを探すのが趣味。インスピレーションの宝庫です。
  2. 中崎町の路地裏カフェ
    • 昭和レトロな街並みが残る中崎町。隠れ家のようなカフェでスケッチブックを広げている時間が至福です。
  3. 国立国際美術館
    • 現代アートの企画展が面白い。地下にある変な形の建物自体もアートです。

佐藤くんへの一問一答

Q. 東京への未練はありますか? A. 正直、たまにすごい展示を見ると「いいな」と思います。でも、深夜バスですぐ行けるし、住む場所としては大阪が肌に合ってます。

Q. 将来独立したいですか? A. はい、30歳までに自分のスタジオを持ちたいです。社長も「どんどん独立しろ!そして仕事回せ!」って言ってくれてます。

Q. どんな後輩と働きたいですか? A. 上手い下手より、「変なこだわり」がある人。「なんでそこもっとるん?」みたいなツッコミどころがある人と働きたい(笑)。

Q. 大阪のデザインってダサくない? A. 「ダサい」んじゃなくて「強い」んです(笑)。目立ってなんぼ、伝わってなんぼの精神は、デザインの本質やと思います。

Q. 彼女はいますか? A. 美大時代の彼女と遠距離恋愛中です。月一で京都デートしてます。

就活中の美大生・専門学生へ

「東京に行かないと一流になれない」なんて、嘘です。 今はネットで世界中と繋がれる時代。場所なんて関係ない。ポートフォリオさえあれば、どこにいたって仕事はきます。 むしろ、感性を磨くための「生活の質」を確保できる場所を選ぶべきだと思います。

大阪には、東京にはない「熱気」と「カオス」があります。 整いすぎていない、雑多でエネルギッシュなこの街は、クリエイターにとって最高の遊び場であり、実験場です。 綺麗にまとまったデザインより、見た人の感情を揺さぶるような、ちょっと変で面白いモノを作りたいなら。

大阪は、君の想像力を絶対に裏切りません。 一緒に、関西から面白いこと仕掛けましょうよ。待ってます!